SFAによる呼称訓練 | 失語症へのアプローチ紹介
SFAを用いた呼称アプローチ
(理学療法士 行田智哉)
「呼称障害」は失語症で最も多く見られる症状の一つで、患者さんの生活の質を大きく左右します。
日常会話で物の名前が出てこないことは、本人にとって大きなストレスです。
また、家族や周囲との意思疎通に支障をきたす要因となります。
そのため、失語症リハビリにおいて「呼称」は中心的な課題のひとつといえるでしょう。
呼称改善のアプローチには、音韻キューや、意味キュー、ジェスチャーの利用、遮断除去法を用いた方法など様々なものがあります。
その中で特に注目されてきたのが Semantic Feature Analysis(SFA) です。
SFAとは?
〇SFAの基本的な考え方
SFAは、その語に意味的に関連する語彙(意味属性)を想起することで、
意味のネットワークを強化し、呼称を促進する訓練方法です。
〇SFAで扱う意味的特徴の例
例えば「犬」をターゲットとする場合、以下のような意味的特徴を整理します。
・カテゴリ:動物
・特徴:4本足
・役割:番犬、ペット
・場所:家、外
患者さんはこれらの特徴を思い出す過程を通じて、
意味ネットワークを広げ、最終的に「犬」という語にアクセスしやすくなるのです。
SFAのエビデンス
SFAの有効性を最初に体系的に示したのが、Boyle & Coelho(1995) の研究です。
この研究では、57歳男性(Broca失語、発症から65か月)を対象に、1回60分、週3回の頻度で実施したSFAの訓練効果を見ています。
ベースラインで呼称が困難であった41語を選び、34語を訓練語、7語を非訓練語として使用しました。
その結果、以下のような効果が報告されています。
・訓練語の呼称:ベースラインで20%未満だった正答率が、最終的には100%正答に到達。
・コントロール語:少数語(7語)の訓練後に改善がみられ、その効果は1か月後・2か月後のフォローアップでも維持。
SFAの効果の特徴として重要なのが、非訓練語にもきちんと汎化していること、持続効果もあったことです。
限られたリハの時間では限定した語句しか練習できません。
そのため、汎化作用が働くということが非常に重要になります。
〇メタアナリシスによる検証結果
さらに近年では、より定量的に検証するために、複数の研究を統合したメタアナリシスも実施されています。
例えば、Yinaらの分析では、12件の研究・失語症者35名のデータを対象に、SFAが呼称改善に与える影響が検討しており、
その結果、訓練語、非訓練語ともに効果があることを報告しています。
ただし、非訓練語に関しては、一様に効果があったわけではなく、
意味的に「関連のある非訓練語」の方が改善しやすいという特徴もあったようです。
・Boyle, M., & Coelho, C. A. (1995). Application of semantic feature analysis as a treatment for aphasic dysnomia. American Journal of Speech-Language Pathology, 4(4), 94–98.
https://pubs.asha.org/doi/10.1044/1058-0360.0404.94
・Quique, Y. M., Evans, W. S., & Dickey, M. W. (2019). Acquisition and Generalization Responses in Aphasia Naming Treatment: A Meta-Analysis of Semantic Feature Analysis Outcomes. American Journal of Speech-Language Pathology, 28(1S), 230–246. https://doi.org/10.1044/2018_AJSLP-17-0155
臨床でのSFAの実施方法
それでは、実際の臨床現場でのSFAの実践方法を紹介します。
SFAは身の回りにある物品を使って実施できます。
〇準備する物
・絵カードや写真教材
・紙やホワイトボード
・筆記具
〇事前準備
・ターゲットとなる絵カードや写真を紙の中心にし、
その周りに四角い枠をいくつか記載。
・各枠に、「カテゴリ」などの意味特徴を記入しておく。
※できれば事前に印刷しておくことをおすすめします。
〇実施手順
・ターゲットの絵を患者さんに提示。
・STがカテゴリなどの特徴を質問。
・患者さんが意味属性を紙に記載。
(書字が困難な場合には口頭での回答も効果的です。)
・最後に呼称を行う。
★アプリを活用した実施方法
臨床の場では、なかなか教材準備にかける時間を作ることが難しいことがありませんか?
また、急性期のベッドサイドや訪問リハビリでは机を広げることが難しいことがあります。
そのような場面では、タブレット端末の活用が有効です。
アプリ「リハサプ」では、SFAが搭載されており、タブレット上で実施できます。
紙の切り貼りなどの事前準備が不要で、限られたスペースでも実施できます。
さらに、SFAで練習した単語を使ってスピード呼称(RISP)など別の課題を実施することも可能です。
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まとめ
SFA、意味的特徴に基づいて呼称を促す失語症リハビリの有効な手法です。
エビデンスに基づく様々なアプローチを実施することは、失語症リハビリの選択肢を広げ、患者さんの「言葉を話す喜び」につながる可能性があります。
是非、臨床の場でも取り入れてみてください。
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